光計測技術とその応用研究クラスター
「地球のため、人のため」大胆な発想と細心の考究で
「光通信」に新たな境地を開拓する
非接触・非破壊で各種の測定が可能な光計測基礎技術としての各種部品技術、光検出技術などを取り上げ、諸計測システムへの応用研究を行う。高性能と経済性を兼備する商品の実現までを視野にいれた産官学連携型研究開発を目指す。
コーディネーター
山林 由明 YAMABAYASHI Yoshiaki
公立千歳科学技術大学 特任教授・博士(工学)
専門分野
光伝送工学、レーザ計測
経歴
北海道大学工学部応用物理学科 卒業
日本電信電話公社 電気通信研究所
NTTエレクトロニクス株式会社
NTT未来ねっと研究所 フォトニックトランスポートネットワーク研究部長
北海道大学大学院 工学研究科学位(博士)取得
所属学会
電子情報通信学会、応用物理学会、レーザー学会、IEEE
レーザ光の反射を利用した水面距離計測
「光計測」が研究テーマです。水面での光パルスの反射を利用して水面の高さを検出する実験などに取り組んでいます。透明度の高い海では、水底が見えてしまい水面が視認しにくいため、水上機と水面との距離が分からず着水に危険が伴うという指摘に端を発しています。これを解消する研究は現在のところ、水の透明度が高い、あるいは水面が少々揺れていても検出できるところまで進んでおり、さらに実用に近い条件下でも正確に計測できるように研究に取り組んでいるところです。
また、この技術の実用化への一歩として、道外の企業との共同開発で、試作品を用いた計測実験を開始しています。光のみを用いるこのセンサは、センサ部への給電を必要としないため、光ファイバのみで配線が可能です。このため、石油製品などの放電による火災が懸念される領域でも適用できる利点があります。また、非接触で液面の高さが測定できることから、さらに他の液体への拡大も視野に入れて検討しています。
キーワード
■光パルス
■遅延計測
■距離測定(測距)
■光ファイバ
ファイバの突き合わせ結合を利用した2次元歪(ひず)みの動的計測
従来の歪みゲージは「箔センサ」と呼ばれ、薄いシートの上に往復させた電気細線の伸び縮みが電気抵抗の変化として検出できることを利用したもので、原理的に1次元方向の歪みにしか応答しません。さらに、微弱な放電スパークでも断線することや電磁雑音を除去するための工夫が必須であることにくわえて、感度を上げようとすると高速応答特性が犠牲になるというトレードオフがありました。
応力に対する歪みを動的に、かつ2次元で計測したいという要求に対して、光ファイバの突き合わせ結合特性変化を利用した計測法の可能性について研究しています。図4に示すように、単一モードファイバから2モードファイバに光が入射するとき、無歪みであれば(上)、出射側のファイバには中央部が明るい最低次モードのみが励振されるのに対して、結合点で歪みがある(下)と後段のファイバには1次モードも励振されます。このモードは、図の右下に示すように、入射方向に応じたパターンを示すことから、歪み方向を検知できる可能性があります。このことは、基礎的な実験で、図5・図6に示すように確認することもできました。互いに直交する歪み方向に応じて、出射パターンも直交していることが分かります。
キーワード
■動的歪み計測
■ファイバ突き合わせ結合
■モード
大胆な発想と細心の考究で新たなフィールドを開拓
どの研究も「面白い」そして「人がやっていない」ことをやることをモットーにしています。
本研究プロジェクトには大学の学生たちも参加していますが、固定概念に囚われない新しい発想を持っていて、研究者の私自身も驚かされることがあります。
新しい考え方や手法を積極的に取り入れ挑戦し、その結果、社会と地球のために役立つものが生まれることが研究の最大の魅力です。その取組にぜひ多くの方々に参加してほしいと思っています。
研究には、大胆な発想と細心の考究が必要です。この二つを同時に行うのは難しいですが、新たな境地を開拓するため、共に開発をして頂ける方はぜひお声掛けください。