有機ナノテク研究クラスター
「環境」にやさしい材料の開発がテーマ
実用化に向けた新しい挑戦が始まっています
ナノテクノロジーは環境化学の中で重要な分野です。天然材料の新規応用として、新規ハイブリッド材料の開発は機能性デバイスや材料にも応用されます。環境問題、例えばマイクロプラスチックの環境汚染問題の解決のためなどにも不可欠です。
コーディネーター
オラフ・カートハウス Olaf Karthaus
公立千歳科学技術大学 教授・理学博士
文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)スポーク機関主任者
専門分野
高分子科学、薄膜作成、散逸構造、ナノテクノロジー、天然高分子、ハイブリッド材料、マイクロプラスチック
経歴
ドイツ ヨハネスグーテンベルク大学 化学・薬学部化学科卒業
ヨハネスグーテンベルク大学 化学・薬学部有機化学科博士課程修了
日本学術振興会外国人特別研究員(東北大学工学部応用化学研究員)
北海道大学電子科学研究所電子機能素子部門分子認識素子研究分野 助手
千歳科学技術大学理工科学部応用化学生物学科 教授
所属学会
高分子学会、日本化学会、オーアーゲー・ドイツ東洋文化研究協会、ドイツ語圏日本学術振興会研究者同窓会
花粉を使った新技術が実用化へ向けて動き出しています
花粉のナノ構造について研究を行っています。生物学者と共同して、生物のナノ構造を知る勉強会などを定期開催し、花粉のナノ構造を模倣し人工的に作製することも行っています。
花粉は耐久性に優れており、光・熱に強い物質で、500℃まで加熱しても形を維持し、有機材料でこれほどまでの耐久性を持つものはほかにありません。
この花粉のナノ構造を利用した素材について、現在、民間企業との共同開発も進んでおり、実用化に向けて動き出しています。近い将来、より詳しい情報を皆さまに届けることができる予定です。
無駄のないものづくりと無駄のない再利用を実現し、環境問題の解決に役立てたい
その他の研究として、最近注目しているテーマは、現在、環境問題となっているマイクロプラスチックについてです。
近年、全世界で問題になっている海洋プラスチックによる環境問題。プラスチックによる環境汚染問題や、使用しているプラスチックから発生する、マイクロプラスチックというものです。
例えば、衣服から出るナイロンの繊維、道路の白線、屋根やガードレールの塗料等、私達の生活に密接に関わるものがほとんどで、ポイ捨てで発生したプラスチックゴミよりも遥かに大きい割合を占めている環境汚染問題なのです。
私の調査・研究は、プラスチックはどういったメカニズムで劣化していくのかというものです。有機ナノテクノロジーの技術を用いて、このプラスチックに変わる天然素材や新規ハイブリッド材料を開発し、微生物が分解できるようなプラスチックや、特殊なコーティングをして熱や湯気にも強い紙等、プラスチックに変わる環境に優しい有機素材の実用化を目指しています。
こうした新しいテーマについて、天然樹脂を取り扱う企業や、パッケージ、製紙業界の企業などがあれば、研究・開発を一緒に取り組んでいきたいですね。
今後時間をかけて実現させたい夢は、再生可能な資源を100%無駄なくエネルギーと物質につくり変え、それらをまた100%リサイクルすることです。
このクラスターでの研究開発が、地域産業の活性化だけでなく、環境汚染問題の解決に役立てられるよう、実現化に向けて日々努めていきます。