レーザと非線形現象研究クラスター
研究クラスター事業

レーザと非線形現象研究クラスター

次世代光アクセスシステムへの適用と
産業用ファイバレーザ光源への新展開を図る

光非線形現象を用いた新規光学装置、フォトニック結晶導波路を用いた光学デバイス、レーザを用いて超高速現象をとらえるためのデジタルホログラフィー、光パワー伝送用光ファイバー等の研究開発を行い、実用化を目指す。

コーディネーター

coordinator

唐澤 直樹 KARASAWA Naoki

公立千歳科学技術大学 教授・Ph. D

専門分野

超短光パルス技術、非線形光学、非線形ファイバー光学、フォトニック結晶ファイバー

経歴

慶應義塾大学工学部電気工学科卒業
アメリカ カリフォルニア工科大学応用物理専攻博士課程修了
カリフォルニア工科大学研究員、JST CREST研究員(北海道大学)を経て
公立千歳科学技術大学教授

所属学会

応用物理学会

フォトニック結晶導波路を利用した新しい光デバイスの研究

フォトニック結晶導波路(超微細構造導波路)を利用した、新しい光デバイスの研究・開発が当研究クラスターのテーマの一つです。規則的に穴が開いた基盤(薄膜)を人工的に作成し、通信用の赤外波長領域におけるデバイスを研究しています。穴が無い部分に光が閉じ込められその部分だけを導波していきます。穴の構造によって色々な特性や機能を設計できるという面白い特徴があります。

その閉じ込め効果は光ファイバーの約300倍で、非線形光学効果がアップします。そこへスローライト効果が加わることでその発光がレーザ発振し、新しいタイプのアップコンバージョン素子(1.5μm帯→1.3um帯)が実現します(図1)。通常のレーザは共振器を用意しなければならないのですが、この構造設計ですと、共振器なしでもレーザ発振が可能となります。通常、光の波長は簡単には変えることができませんが、上述のような特殊な構造・材料を組み合わせることで、波長を変えることが可能となるのです。

添付画像

図1-1.フォトニック導波路(a)による波長変換

フェムト秒パルス技術の応用で人類が体験したことのない新しい領域への挑戦

我々のクラスターではフェムト秒パルス技術に関する研究も行っています。フェムト秒とは10の-15乗(1000兆分の1)秒という超短時間のことです。フェムト秒パルスレーザは、超短時間だけ一瞬光り、それが連続して繰り返されます。そのため、超高速な現象もスローモーションで観察することが可能です。

この技術は人間が獲得している最短時間を扱う技術であり、今のところ他のテクノロジーでは不可能な技術です(超短光パルスレーザそのものは市販されています)。

フェムト秒パルス光レーザでは短い時間にエネルギーを閉じ込めるので、ピークパワーが上昇します。これはパルス幅が短くなる程顕著になります。そのため、穴開け加工等も簡単に行えて、切断面がきれいに仕上がります。また、あまり蓄熱しないため、人体(医療面)でも活用できるなど、色々なメリットがあります。

その他、顕微鏡にこの光技術を利用すると、従来の顕微鏡では見えなかったものが見えるようになります。光のパワーが強いため、この光を物質にあてたときに、通常では光らない物質も非線形光学効果により発光します。その光のスペクトルを検出すると、物質の構造だけではなく、組成もわかるようになるのです。

また、透明なガラスを加工しようとすると、通常のレーザでは光を吸収せずに透過してしまうので、なかなか難しいのですが、超短光パルスであれば、非線形現象が起きて、簡単に加工できるようになります。

このほか、デジタルホログラフィーという技術を利用して、超短光パルスを光源として画像の撮影をすると、極端に早い現象(1兆分の1秒レベル)の位相振幅画像が撮れるため、その極めて短い間に何が起きているかが見えるのではないかと考え、実験検証を行っています。これは例えばレーザ加工時(光が物質にあたった瞬間)になにが起きているのかを知りたいときに非常に有効な技術となります。

デジタルホログラフィーではレーザから出た光を二つに分離し、一方の光を見たい現象に当て、他方の光とカメラ上で干渉させ、それらの干渉画像を記録します(図2)。そしてこの画像をコンピュータで解析することにより振幅と位相の画像が得られます。今回我々の考慮した方法では一方の光パルスを時間的に引き伸ばします。そしてこの光と複数の時間差のある光パルスを重ね合わせた時に生じる干渉画像をカメラで撮影し記録します。この干渉画像をコンピュータで解析すると複数の時間差を持った瞬間の振幅と位相の画像が別々に再構築できます。

この技術をうまく用いれば、1兆分の1秒の時間で物質がどのようにレーザ加工されるのか、あるいはプラズマがどのように発生し変化するのか等が解明されるかもしれません。これは誰も見たことのない新しい領域への挑戦です。図2では、水中を超短光パルスがプラズマを発生させながら伝搬していく様子を異なる時間(0秒と0.67ピコ秒)でとらえた例です。

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